針/殺/光(3本詰め)

【針】


貴方が視界に入るだけで
頭は痛む眼は痛む。
貴方の声を聴くだけで
耳は痛む胸は痛む。
ただ見て居た事が、ただ声を聴いていた事が、酷く懐かしい。
今や
ただ見て居るだけじゃ
ただ声を聴くだけじゃ
耐えられない。

貫く程の痛みが欲しい。

自分の欲に
気が狂ってしまいそう。

そんな今の私にとって
いつもの部室は針の筵。


【殺】


陰のない顔で微笑む女。
常に気丈に振る舞う女。
決して面にゃ出さねぇが
そんなお前を見る度に
そんなお前と会う度に
急速に歪んだ何かが
狂った何かが俺を蝕む。
ソイツは徐々に滞積して
殺す機会を窺っている。

ひっそりと。
闇の中から。

俺の理性を殺そうと。

俺を見るな
俺に触るな
早くここから逃げ失せろ
俺がコイツを殺す前に
コイツがお前を殺してしまう。


【光】


苦しい苦しい
ただ苦しい。

授業を受けていても
ご飯を食べていても
こうして屋上で
きらきら光を浴びて寝転がっていても
一向に晴れない胸中の靄。

眼に映る光の色は
まるであの人の髪の色。

あぁ太陽。

水を水蒸気に変える様に
この靄も
霧散させてくれればいいのに。
私の心を
浄化してくれればいいのに。
こうして光を浴びているけれど

私の心は闇ばかり。