無知は罪 Seen.2

seen2:会場中央

「姉崎さん久し振り!5年経っても変わらないねー」
「あ、あぁ久し振り。そうかしら?」
「俺今日姉崎さんに会えると思って楽しみにしてたんだよー」
「お前女房いんだろ」
「お、おい!それ言うなよ!」

先程から続く挨拶責め。それが終われば取り留めのない話の嵐で囲まれたまま一歩も動けないでいた。

えーっとこの人誰だっけ。顔は見た事あるような気がするな。

 それよりせっかくのビュッフェなのに手が出せないのが何とも辛いのだけれど。咲蘭とアコとも話したいしムサシ君達にも会いたいし。咲蘭達もムサシ君達も何回か目は合うんだけど一歩も動けないせいで話かけられずにいた。どことなく双方とも落ち着かない様な感じに見えるのは決して勘違いじゃあないと思う。私だって落ち着かないもの。花輪の後ろの妖気のせいで。

「ご飯食べたいんだけどなぁ…」

こっちに着いてから結局何も食べられていない。ビュッフェ(のスイーツ)を楽しみにして朝も軽く済ませてきたからいい加減お腹も空いてきていて、思わずそんな言葉が口を吐いて出た。そんな嘆息混じりに吐いた一言が聞こえていたらしく、取り皿を持った同級生(男)が気がついたら隣にいて、何故か急に手を取られた。
え?ちょっとどうしよう。

「ね、姉崎さん。一緒に食べ物取りに行こうよ」

うろたえる私を尻目にぐいぐいと腕を引っ張っていく同級生。
ちょ、ちょっと待って!
慌てながらちらりと周りを見てみれば。

あ、今アコ達固まった。