無知は罪 Seen.3

seen3:会場左側

「ねねねねねぇこの状況はなななななに?」
「さささささぁかつてはよく見た光景だったけどねぇぇぇぇぇ」

全く身動きが取れそうにないまもを遠目で見遣りながら食事を突いていたら、急に目の前で起きた積極的なアタックに、咲蘭共々慌てるしか出来なかった。
だってまもがいるんだから旦那がいない訳ないのに。あぁ末恐ろしい。

「…そういえばアイツら、まもの旦那がアレだって知らないんだっけ?」
「多分知らない筈だよ…。だって結婚式にいた泥門卒の面々て私たち以外はアメフト部だけだった気がするもん」
「…哀れだよね」
「…哀れだね」

男共の先行きを案じて、咲蘭と二人でワインを傾けながら先を見守る事にする。見守る、と言うよりも観戦、の方が正しいかも知れない。

「って言うかあの状態じゃあ、奴がいなきゃまももご飯食べられないよね」
「それは同意」
「本当は助けてあげたいんだけどねぇ」
「巻き込まれたら元も子もないしね…」

お互いうんうん頷いて、なんだかどす黒いオーラが見え隠れしていた花輪の方を見た。まもが困ってるんだから、この際悪魔だろうがなんだろうが縋ってやろうじゃないか。そう思っていたら咲蘭が恐る恐る呟いた一言が。

「あれ?ねぇアコ、花輪のとこ…ヒル魔、いなくなってるみたい…だよ」
「んー?…げっほんとだ!」

あぁ遂に悪魔が動きだしましたよ神様仏様まもり様。咲蘭と一緒にぶるぶる震えて料理と共に逃走を図る。離れて観察するに限るでしょ、あの男の大立ち回りは。

だって爆風に飛ばされるのは、丁重にお断りしたいんだもの。