無知は罪 Seen.4

seen4:会場中央・奥

 名前も知らない同級生に腕を引かれて料理の前に連れて来られた。ちょっと距離を置いた所にペースが衰えない栗田君。相変わらずすごい。私を引っ張ってきた張本人はと言えば、私の事なんてお構いなしに一方的に食べ物を私のお皿に盛りながらマシンガンの如く喋り続けていて、会話のキャッチボールと言うよりも宛らバッティングマシーンの様だった。だってそれぐらいの勢いがあったもの。実際。私はと言えば盛られたサーモンマリネを一口摘んでは同意を求められて頷いている状態で、まともに食事の味が分からない現状に疲れてきていた。

もう、どこいっちゃったんだろう。いい加減出てきてくれればいいのに。

 はぁと小さく溜め息を吐いた時、未だに食べ続けている栗田君と目が合って、お互い苦笑いを交わす。きっと笑顔がひきつってると思うのよね。延々と私に構う事なく話し続ける同級生の話をまとめれば、要は今度ご飯食べに行きませんか、な趣旨の様で、じゃあ一言それだけ言ってくれればいいのにとは思ったのだけれど、取り付く島もなく。回りにはさっきの同級生達がまた群がり出して正直言ってしまえばうんざりしていて、助けを求める様にもう一度栗田君の方を見た。
そうしたらさっきまでは普通だったのに、今は食べかけたまま口をあんぐりと開けて目が点になっている。

…何か嫌な予感がする。きっと私の後ろに何かがいるのね、何かが。

そんな気配にもまるで気付く事なく雄弁と語り続ける同級生に、いろんな意味で脱帽ものだった。