無知は罪 Seen.5

「ヤアヤア久シ振リダネ糞同級生諸君。イカガオ過ゴシカナ?」


seen5:まもりの後ろ

 糞女が行きたがっていた同窓会の会場に着いた途端、甘ぇモンの山に惹かれてふらふらどっかに行きやがった糞女を一人で放って便所に行っている間に、どっから湧いて出たんだかケーキに群がったアリの様に糞野郎共が糞女の回りに群がっていた。おーおー俺のモンだと知っていてよくもまぁあんだけ群がるモンだと関心しかけて、はたと気付いた。そういやあ結婚式呼んだのはアメフト部以外はあの女のダチ二人だけだったか。そりゃ知らねぇか。それを差し引いてもだ。あの群がり様ったらねぇだろ。高校ん時より酷ぇんじゃねぇのか。あぁもしやテメェら俺が来てねぇとでも思ってやがんのかよしいい度胸だ遺言くらい書いとけよ覚悟しやがれ。
 都合よく目の前にあった無駄にでけぇ花輪の後ろに身を潜めて、作戦を実行する機会を伺う。糞女と糞女のダチと糞ジジイ共は気付いたみてぇだがンなモンは想定内だ。もう余裕で。花輪の後ろからどさくさに紛れて糞女に触ったり話しかけたりした奴を片っ端から脅迫手帳データベースから検索して俺の頭脳に記憶していく。おーこりゃ大漁だ。糞野郎が抜け駆けしたんだか糞女の手を握って移動したタイミングで花輪裏から俺も移動する。あの女の手がなけりゃテメェの左手は今頃この世にゃなかったぞ、糞。
 糞女がひきつった顔して馬鹿げた相槌打ってる間にまた糞野郎共が群がり出す。ケケケ印象付けるんなら絶好のタイミングだろうなぁ。喋る事に夢中な糞野郎の隙を突くのはそりゃあ寝るより簡単で、珍しく糞デブの方が気が付くのが早かった。
おい口閉じろ。中身出るぞ。
それで、だ。そうやって見事糞女房の背後、すなわち害虫の前に立った俺はこれでもかってくれぇの嗤い顔で言ってやった訳だ。

「ヤアヤア久シ振リダネ糞同級生諸君。イカガオ過ゴシカナ?」
「ヒ、ヒル魔…!?」

周りの空気が凍る。
随分久し振りだな、こういうのも。